”角田光代”さんワールドとは このことか!
彼女の著作物を初めて手に入れて何の先入観もなしに読んだ。
「私の人生は、はたしてこれから どこに向かうのだろう?」
という誰でも漠然と抱えている形のない心のモヤがある。
そんな心のモヤを かたっぱしから全部手のひらの上にわかりやすい言葉を使って並べ、自分と状況は全く違うのに、まるで一緒に主人公の1人として輪に入り、思考しているような錯覚を起こさせる本であった。
とにかく日本語の運営力が素晴らしくて驚いた。
こんな日本語を話す人に実際会ってみたい。
まるで映画を観ているかのごとく鮮明に物語の風景が浮かび上がる。
(*あらすじだけを知りたい方は一番下へどうぞ*)
女性特有の、ジェットコースターのように絶え間なく上下左右に揺れ動く気持ちを、"高校生時代" と "大人になってから" の2つの時期を切り取って物語が描かれている。
結婚する女
しない女
子供を持つ女
持たない女・・・
世の中にはさまざまな状況の女がいる。
主人公たちの、悪く言えばありふれた日常生活の心の愚痴を中心としたゴールの見えないやりとりが、この本のメインディッシュだ。
愚痴だけのお話ならあっという間に本を閉じたであろう。
しかしそこは著者の巧妙な展開により、本を閉じようとする私にそうさせてくれない。
一直線に最終章まで連れて行かれたのだ。
読了後、私は今まで行ったことのない心の場所にたどり着いてしまった。
ここがどこなのか、今、自分はどんな思いに浸っているのか、自分自身の心が理解出来ない不思議な現象。
52歳にまでなって、読んだ後に説明できない場所に連れて行かれたことにただただ驚いている。
日々の忙しさについ流されて、なかなか自分の心の闇に向き合えない事が多いのが現実。
角田さんが描く主人公と共に、最後にはハッと生きる意味を見出した着地点の描き方に、胸ぐらを掴まれたこの気持ちの事実を誰かに伝えたい。
読了後しばらく(約24時間)ボヤ~っと浮遊状態になり、家事をしてても心ここにあらずだった事実も合わせて報告いたします。
読むのに時間がかかりそうな作品に思えたため、購入を躊躇していたが、思い切って手を出して良かった。
著者の他の作品をさらに読みたい。
この本を読むと何か感じるものがあるかもしれないと思われる方はこんな人かもしれない。
・角田さんの著書を初めて読む方
・50代以上の既婚女性
・どちらかというと家にいるのが好きで、他人との世間話が得意ではない方
・ 自然の景色を観察することが好きな方
・ブログや日記を丁寧に書きたいと思っている方
上記に当てはまる方は読んで後悔はないかと思われます。
逆に、じっくり考えるのが好きではない人、忙しくて眠る時間を削っている人、社交的で世間話が大好きな人、にはあまり向かないかもしれないです。
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時間:9時間29分
朗読:小林さやか ☆☆☆☆☆
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*1倍速、約9時間半という長編
朗読された「小林さやか」さんの落ち着きある声、決して大げさではないが表情豊かな話し方が素晴らしく、耳にするりと入ってきて長編であることを感じさせなかった。
倍速で聴くのがもったいないと感じさせた。
このナレーターならば、自分の目で活字を読むより耳から聴いた方が臨調感が味わえる気がした。
(紙の本の長さは 334ページです)
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著者:角田光代
下記 Amazonより引用
1967年、神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。
90年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞、98年『ぼくはきみのおにいさん』で坪田譲治文学賞、『キッドナップ・ツアー』で99年産経児童出版文化賞フジテレビ賞、2000年路傍の石文学賞、03年『空間庭園』で婦人公論文芸賞、05年『対岸の彼女』で直木賞、06年「ロック母」で川端康成文学賞、07年『八日目の蝉』で中央公論文芸賞を受賞。著者に『三月の招待状』『森に眠る魚』『くまちゃん』など多数。2010年7月には、毎日新聞の連載『ひそやかな花園』も単行本化された。
* あらすじ(Amazon より引用)
いじめで群馬に転校してきた女子高生のアオちんは、ナナコと親友になった。専業主婦の小夜子はベンチャー企業の女社長・葵にスカウトされ、ハウスクリーニングの仕事を始める。立場が違ってもわかりあえる、どこかにいける、と思っていたのに……結婚する女、しない女、子供を持つ女、持たない女、たったそれだけのことで、なぜ女どうし、わかりあえなくなるんだろう。女性の友情と亀裂、そしてその先を、切なくリアルに描く傑作長編。第132回直木賞受賞作。